ここは2045年の世界……あり得るかもしれない時の一点。

20世紀人が、電卓の普及からインターネットの日常化を目の当たりにした際のめまぐるしさで。
19世紀人がライト兄弟からジェット機の誕生を知った進歩の凄まじさで。
そして、大正人が平成人といかに似通ったスーツを着ていたかという普遍性で。
世界は変化し、しかし一見変わっていなかった。

家は鉄筋であり、木造であり、食事は陶器の皿と金属のスプーンをもってなされていた。
服の素材は綿であり、ナイロンであり、けれどナノサテンが派手好きには受け入れられていた。
人が持ち歩くのは電話であり、コンピューターであり、紙の紙幣であり、電子マネーであり、
ボールペンでサインを求められるクレジットカードとクォーツ式の腕時計であった。

せいぜい、大きな変革があったとすれば━━
燃料としての石油がほとんど用いられなくなっていること。単一国家間の戦争が消滅したこと。
そんな程度に、世界は激変し、恒常的であった。



ロシアからの来訪者達を撃退した主人公、シュヴァルツ・カント・焔━━
すなわち、対諜報機関『ゐん』のエージェント、クリムゾン。

彼は量子コンピューターシュアルのマスターである栗須翠と共謀者の契りを交わし、
共に秘密組織『A』へと立ち向かっていくことを誓う。

しばしの穏やかな日々が流れ、その関係を深めていくように見える焔と翠。



だが、さらなる敵は来たる。

静かなる嵐をその心に抱いて。

浸透しようと画策する。

目的はただ一つ、階段をのぼりゆくため。

謎の少女、アスアノとは何者なのか。

姿を現す秘密組織の数々。

世界は巨大な混沌の闇に包まれつつ、その意味を、意義を秘めて、ただ━━在るのみ。



孤高の夢は踊り、黒天使は嗤い、巫女は泣き叫ぶ。

彼は復讐する者である。己の愛した人のため。
敵を絶滅し尽くさんとするため、すべてを捨てて黒い赤く感情をもって、立ち向かう一人の小人(しょうじん)である。

悪魔の囁きを投げかけるは美しき黒の天使。
さあ、不倶戴天の輩を殺し尽くそう。そのために何の考慮が必要か?皆無ではないか。

狂気をたたえる瞳の色。
それは深紅なり。血の色なり。命の色なり。

彼は己をこう称す。
我が名はクリムゾン! 『A』の者共よ、よくぞ我が眼前に現れた? その首、頂戴する。

連作フューチャーオペラ、第二幕。
汝、刮目して見よ。


モドル