ここは2045年の世界……あり得るかもしれない時の一点。

20世紀人が、電卓の普及からインターネットの日常化を目の当たりにした際のめまぐるしさで。
19世紀人がライト兄弟からジェット機の誕生を知った進歩の凄まじさで。
そして、大正人が平成人といかに似通ったスーツを着ていたかという普遍性で。
世界は変化し、しかし一見変わっていなかった。

家は鉄筋であり、木造であり、食事は陶器の皿と金属のスプーンをもってなされていた。
服の素材は綿であり、ナイロンであり、けれどナノサテンが派手好きには受け入れられていた。
人が持ち歩くのは電話であり、コンピューターであり、紙の紙幣であり、電子マネーであり、
ボールペンでサインを求められるクレジットカードとクォーツ式の腕時計であった。

せいぜい、大きな変革があったとすれば━━
燃料としての石油がほとんど用いられなくなっていること。単一国家間の戦争が消滅したこと。
そんな程度に、世界は激変し、恒常的であった。



『テラトランジスタの巫女』ことアスアノと『マイスター・オブ・セフプ』ハルマンを退けた
数ヶ月後、シュヴァルツ・カント・焔の元に一通の手紙が届いた

『マンハッタンでアメリカの心臓に何かが起こる。
当地で待つ。
━━ハルマン・モッノリス』





摩天楼の都市は手招きする。

我が内包するは地球最強の混沌なるぞと。

金持ちは高らかに笑う。

汝ら小さき庶民、いかにか細い剣にて我へ立ち向かおうというのか?

不屈の観察者は告げる。

汝、天才たるを証明せよ。為せぬならば捨てるのみ。

フィンランド人の男女、チャールズとアルジャーノン。

円卓の金融騎士、マリー・シャールート

ニューヨーク・マンハッタンへ集う幾多のエージェント達。



孤高の夢は踊り、黒天使は嗤い、巫女は泣き叫ぶ。

彼は復讐する者である。己の愛した人のため。
敵を絶滅し尽くさんとするため、すべてを捨てて黒い赤く感情をもって、立ち向かう一人の小人(しょうじん)である。

悪魔の囁きを投げかけるは美しき黒の天使。
さあ、不倶戴天の輩を殺し尽くそう。そのために何の考慮が必要か?皆無ではないか。

狂気をたたえる瞳の色。
それは深紅なり。血の色なり。命の色なり。

彼は己をこう称す。
我が名はクリムゾン! 我が復讐の『軸』はいよいよもって先なる場所へ打ち立てられるものなり! いざ見よ!

連作フューチャーオペラ、第三幕。
瞳に焼き付けよ。


モドル